実効税率の上昇可能性とその問題点

 今更ながら平成28年度の税制改正大綱を読んだ。法人税の実効税率引き下げ・消費税の軽減税率導入など大きな変更点があったが、全てをブログに書くには内容が多すぎるので詳しくは下記リンク(財務省のWebサイト)をご参照いただきたい。
 平成28年度税制改正の大綱(目次) : 財務省
 
 私がこれを読んでいて気になったのはいわゆる「実効税率」の上昇可能性についてである。

実効税率の計算方法

 実効税率とは、課税所得に対する総合的な税率を指す。従って、例えば法人事業税の資本割のように資本金を課税標準とする税の税率は実効税率に影響しない。実効税率はあくまで所得を課税標準とする税をひとまとめにして算定された税率に過ぎず、個人・法人に対する全ての税金を含んでいるわけではない。

 実効税率を算出する式は下記の通りである。
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 一般的に実効税率は地方税の税率について標準税率を用いて計算しているが、実際には一部の地方税*1の税率は条例で引き上げることができる。この引き上げ後の税率を超過税率と呼ぶ。

標準税率と超過税率の違い

 まず、標準税率の定義をおさらいする。これは地方税法1条に記載されているが、地方税法上の標準的な税率のことである。

五  標準税率 地方団体が課税する場合に通常よるべき税率でその財政上その他の必要があると認める場合においては、これによることを要しない税率をいい、総務大臣が地方交付税の額を定める際に基準財政収入額の算定の基礎として用いる税率とする。

 「必要があると認める場合においては~」との記載があるが、これは地方公共団体が条例で標準税率を超える税率を定めることができることを示している。これを「超過税率」と呼ぶ。超過税率は無制限に上げられるわけではなく、地方税法72条の24の7(法人の事業税の標準税率等)の第七項では、その上限を標準税率の1.2倍に制限することが定められている。

 今回の税制改正では、この上限が2倍になる予定だ。これは地方公共団体が標準税率の定められている税の税率を、条例により最大で2倍まで上げられるということを意味する。
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東京都の実効税率

 例えば、東京都の実効税率はこの記事を書いている時点で33.06%である*2。これが、平成28年4月1日から平成29年3月31日に開始する事業年度では
(23.4%*(1+4.4%+12.9%)+414.2%*0.7%+0.7%)/(1+414.2%*0.7%+0.7%) = 29.97%
となる*3

 超過税率は現在のところ標準税率の1.05倍程度なので、この水準が維持されれば
(23.4%*(1+4.4%+12.9%*1.05)+414.2%*0.7%+0.7%*1.05)/(1+414.2%*0.7%+0.7%*1.05)=30.14%
となるだろう。

 しかし、東京オリンピック等で東京都に財源が必要になった場合は、条例に基づき増税される可能性がある。全ての超過税率を2倍まで引き上げた場合の実効税率は、33.33%となる。実際に2倍にすると強い反発を招くので急に2倍になることは考えにくいが...

 このように、標準税率を用いて算定される実効税率は引き下げられているが、地方公共団体の裁量で実効税率を引き上げることができる。3月末までには超過税率が決まるので、自分の住んでいる都道府県の実効税率を算定してみてはどうだろうか。

今後の税制改正の方向性

 実効税率の引き下げ、外形標準課税の拡大は今後も続くと考えられる。これによって赤字企業の納税額は増え、黒字企業の納税は減ることになる。また、今回の超過税率上限の引き上げのような地方公共団体の裁量拡大による財源移譲も進みそうだ。

いわゆる「実効税率」の問題点

 税制改正で公表される実効税率は標準税率を基に算定しているが、実際の課税は超過税率を用いて行われることがある。その場合、都道府県ごとに条例で税率を決めることになるから、最悪3月末まで実効税率が固まらないことになる。今後、地方への財源移譲に伴って法人事業税・法人住民税の税率に対する各都道府県の裁量は拡大していくと考えられるから、標準税率だけを見て実効税率が下がったと早とちりせず、自分の会社がある各都道府県の議会に注目しよう。

*1:法人事業税および法人住民税

*2:平成27年4月1日から平成28年3月31日までに開始する事業年度

*3:事業税は超過税率が適用される部分があるが、東京都の超過税率は決まっていないため、現段階では実効税率の算定に標準税率を用いている