Yahoo決算でのアスクル株再測定益 - IFRSにおける企業結合について

Yahooは平成28年3月期第2四半期の決算で、新たにアスクルを連結子会社化したことによる再測定益596億円を計上した。
この再測定益の根拠について詳しく調べてみた。

Yahooが計上したアスクルの再測定益

再測定益については、第2四半期決算短信の40ページ目に記載がある。
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2.企業結合
(1) 企業結合の概要
当社の関連会社であり主にオフィス用品通販サービスを行なっているアスクル(株)は、(中略)新たに当社の子会社となりました。(中略)また、当社が既に保有していたアスクル(株)に対する資本持分を支配獲得日の公正価値で再測定した結果、59,696百万円の段階取得による利益を認識しております。この利益は要約四半期連結損益計算書上、「企業結合に伴う再測定益」に計上しております。

IFRSにおける再測定益

企業結合の基準についてはIFRS 3 Business Combinationsに記載がある。読むためにはユーザー登録(無料)が必要。
http://eifrs.ifrs.org/eifrs/bnstandards/en/2015/ifrs03.pdf

会計処理の基本的な方針についてはIN5 Core Principleに記載されている。

An acquirer of a business recognises the assets acquired and liabilities assumed at their acquisition-date fair values and discloses information that enables users to evaluate the nature and financial effects of the acquisition.


事業を取得した企業は、取得した資産及び引き受けた負債を取得日公正価値で認識し、取得の性質及び財務上の効果を、利用者が評価することができるような情報を開示する。

IFRSにおける企業結合の原則的な会計処理は、取得法(aquisition method)に基づき、次のステップで行われる(IFRS 3.5)。
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ここでいう取得日は、取得対象となった企業の支配権を獲得した日のことである(IFRS 3.8)。

IFRS 3.8
The acquirer shall identify the acquisition date, which is the date on which it obtains control of the acquiree.

なお、Yahooのようにアスクルの株式を段階的に取得し支配権を獲得した場合は、IFRS 3.41及び3.42に基づき、支配権を獲得した時点で既に保有している取得対象企業の株式を取得日の公正価値で再測定し、その帳簿価額との差額を当該株式の処分損益の計上区分に合わせて純損益又はその他の包括損益として認識する。なお、Yahooの場合は営業損益として計上している。

IFRS 3.41
An acquirer sometimes obtains control of an acquiree in which it held an equity interest immediately before the acquisition date. For example, on 31 December 20X1, Entity A holds a 35 per cent non-controlling equity interest in Entity B. On that date, Entity A purchases an additional 40 per cent interest in Entity B, which gives it control of Entity B. This IFRS refers to such a transaction as a business combination achieved in stages, sometimes also referred to as a step acquisition.


IFRS 3.42
In a business combination achieved in stages, the acquirer shall remeasure its previously held equity interest in the acquiree at its acquisition-date fair value and recognise the resulting gain or loss, if any, in profit or loss or other comprehensive income, as appropriate. In prior reporting periods, the acquirer may have recognised changes in the value of its equity interest in the acquiree in other comprehensive income. If so, the amount that was recognised in other comprehensive income shall be recognised on the same basis as would be required if the acquirer had disposed directly of the previously held equity interest.

公正価値の算定方法は下記の通り。これと株式の帳簿価額との差額が企業結合に伴う再測定による利益となる。
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日本基準における再測定益

現行の企業結合に関する会計基準においては、平成20年の改正に伴い、支配を獲得するまでの全ての株式取得を獲得日の時価で算定し直し、差額を特別損益として計上することになっている(連結財務諸表のみ)。これは、支配の獲得によって過去に所有していた投資の実態・本質が変わった(その時点でいったん投資が清算され、新たに獲得日の時価で投資を行った)とみなすためである。

この点でIFRSと日本基準の処理は分かれてしまっている(IFRSでは営業損益に含めることも可能だが日本基準だと特別損益となる)。最終的な利益は変わらないが、この点では採用する会計基準によって営業利益、経常利益に差が生じる。www.shinnihon.or.jp

IFRSの下で企業結合を行った他社の事例

過去には、ソフトバンクがガンホー、スーパーセル、ウィルコム、スプリント、ブライトスターを連結子会社とした2014年3月期において、2,538億円と巨額の「企業結合に伴う再測定による利益」を計上している。