読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

メタップスの男らしい業績予想について

10月14日に開示されたメタップス(証券コード: 6172)の平成27年8月期決算短信がなかなか面白い。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1291140

決算短信は上場企業が証券取引所の開示ルールに則り作成・提出する、共通形式の決算速報である。売上や利益、主要な指標をまとめた「サマリー情報」と経営成績、財政状態の分析や財務諸表等を記載した「添付資料」部分に分かれており、決算日から45日以内を目安に開示される。

一般的な業績予想について

多くの会社においては実務上、「サマリー情報」内で翌事業年度における「売上高」、「営業利益」、「経常利益」及び「当期純利益*1」の予想値を開示している。少し古いデータだが、平成22年の調査によると、97%の会社が原則的な扱いに沿って業績予想の開示を行っているとのことだ*2
f:id:hqac:20151014231516p:plain
上記の表は(公財)日本証券経済研究所上場企業の業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」より引用した。

本題: メタップスの業績予想

タップスの平成27年8月期決算短信のサマリー情報を見ると、業績予想においては売上高のみを開示しているようだ。

f:id:hqac:20151014225121p:plain

業績予想の詳細は添付資料の「今後の見通し」をご参照ください、とあるので、「今後の見通し」を見てみよう。

f:id:hqac:20151014225138p:plain

長文のあとに業績予想が書かれているが、営業利益以下は「黒字化」としか書かれていない。これでは業績予想というより目標・決意表明ではないだろうか?「業績予想」というからには合理的に仮定された条件に基づいて算出されたものであろうし、そうであれば開示するのが投資者への情報提供という観点から見て望ましいだろう。

もっとも、証券取引所には決算の数値が直近の業績予想を大きく上回ったり下回ったりすると直ちにその内容を開示しなければならないというルールがあるので、会社側からすると業績予想の開示というのは手間がかかることは間違いない。*3

しかし、業績予想が経営陣のコミットメントではなく、あくまで合理的な仮定に基づいた予測に過ぎず、事業環境や前提条件の変動により上下し得るものであることは東証も認めるところである。積極的な情報開示は上場会社と投資者間の情報格差の縮小、ひいては上場会社の資本コスト低下にも繋がるであろうし、開示する側にとっても意義があるものと考えられる。

タップスのような将来有望な会社には、業績予想や今後の見通しの詳細な開示を通じて、是非とも積極的な情報開示と一般投資家とのコミュニケーションを図ってもらいたいものである(なお、業績予想の開示および修正をきらったというのはあくまで私見だということをお断りしておきたい。メタップスの経営陣としては、事業規模を表す売上のみが重要指標であり、段階損益は重視していないのかもしれない。余裕をもって黒字化する見込みだが、事業規模を拡大するのが最優先で、利益は黒字を維持できる範囲で全て事業拡大のための広告宣伝費に充てるということであれば、「黒字化」という業績予想も納得がいく。)。

f:id:hqac:20151014230606p:plain

引き続き、当社グループは、毎四半期における決算発表、業績速報等の実績値の開示の充実など、積極的な情報開示を推進することで、ステークホルダーの皆さまの当社に対する理解の促進に努めます。

役員や従業員、会社を除く「ステークホルダーの皆さま」が求める積極的な情報開示が「黒字化」のみでないことは確かだろう。

*1:平成27年4月1日以降に開始する事業年度に係る業績予想については、『親会社株主に帰属する当期純利益

*2:開示の形式については特に決まった形式があるわけではなく、翌四半期の予想を開示してもよいし、通期の業績予想のみを開示してもよいし、レンジ形式(100万円〜200万円など)で開示してもよい。そもそも業績予想自体、東証の要請に従って投資者の投資判断に有用と思われる将来予測情報を提供するものに過ぎず、法的な開示義務があるわけではない。

*3:業績予想の修正とその開示については、東京証券取引所有価証券上場規程405条および有価証券上場規程施行細則407条を参照