固定資産税とその歴史

この記事の目的

固定資産税の概要と歴史を整理すること

固定資産税の概要

税収

政府の平成27年度予算(平成27年4月9日成立)を見ると、国税地方税収入のうち約51%が所得税・住民税及び法人税、約35%が消費税となっている。なお、平成26年度の消費増税以前は約15年間に渡って10兆円程度だが、増税後は16~17兆円程度で推移している。固定資産税や相続税など資産に対する課税は約14%となっており、消費税や所得税に比べると少ないと言える。
しかし、地方税の税収に限って言えば、固定資産税のみで20%強を占めており、地方にとっては重要な財源である(参考: 総務省地方税収等の状況」)。

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引用元: 国税・地方税の税目・内訳 : 財務省

収益税と財産税

税の分類には様々な方法がある(国税地方税、普通税と目的税、直接税と間接税など)が、固定資産税と他の税を区別するときに注目すべきは、それが「財産の所有」という事実に着目して課されている税ということである。これは一般的に財産税(Property Tax)と呼ばれ、所得税/収益税(Income Tax / Produce Tax)や消費税(Consumption Tax)と区別される。

財産税のリスク

所得税等の収益税は収益の一部を納める税であり、収入が減少するリスクは政府が負う。それに対し、財産税は財産の価値によって納める金額が変わるため、景気の動向に左右されることがない(収入が減少するリスクは納税者が負う)。

固定資産税発展の歴史

地租改正以前

明治6年に地租改正が行われるまでは、江戸時代の租税制度がそのまま引き継がれていた。江戸時代の租税の中心は収穫量の一部を納める「地租」、土地の特産物や商工業等に課される運上、冥加等の「雑税」、労役(幕府の指示のもと江戸城の修理をしたり橋梁、河川の工事をしたり)または代わりの米や金を納める「課役」の三種類があった。

明治政府は当時の列強に追いつくべく財政基盤を強化しなければならず、地租を抜本的に改革した。

地租

地租改正による旧地租から新地租への変更点は以下のとおりである。

  1. 課税標準を収穫量から地価に変更
  2. 納税手段を物納(米)から金納に変更
  3. 納税義務者を耕作者から地主に変更
  4. 地方ごとに異なっていた税制を統一

この時期の税収の半分以上(明治10年までは80%近く)は地租であり、明治期の日本の資本形成は専ら農家が負担していたと言える。これが日本における固定資産税のルーツかもしれない。

また、明治11年に地方税が設けられ、地租の5分の1を上限として予め決められた種類の税を府県議会の議決に基づいて徴収することができるようになった。

地租改正〜戦時中

明治期の経済発展によって、従来の地租を中心とした税制では農業と商工業の間に大きな税負担の差が生じることになった(商工業者の税負担は非常に軽かった)。不公平な税負担の是正に加えて、日清・日露戦争等で大きな財源が必要となったこともあり、酒税、所得税相続税等が創設された。

この時期、地租(固定資産税)の税収が全体に占める割合は低下していく。
ちなみに昭和6年に従来の地租条例が廃止されて地租法が制定され、地租の課税標準は地価から賃貸価格に変更され、財産税から収益税となった。これには(国税庁の研究によると)経済発展に伴い土地の収益力に差が出てきており、税負担の公平性を確保するという目的があった。

戦後

地租は戦後すぐの昭和22年の地方自治法成立に伴い地方税に移譲され、地方の独立財源となった。また、昭和24-25年のシャウプ勧告により、従来の地租は廃止され、土地・家屋・償却資産を課税対象とする固定資産税が創設された。

現在の固定資産税の仕組み

概要

納税義務者

毎年1月1日を賦課期日とし(地方税法359条)、固定資産の所有者(343条1項)が納税義務者となる。
所有者とは土地・建物については登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記または登録されている者をいい(343条2項)、償却資産(341条4項)については、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいう(343条3項)。
なお、賦課期日現在において登記簿に所有者として登記または登録されている者は、所有権を有しない場合であっても納税義務が発生するが、真実の所有者に対して税額分の不当利得請求権が発生するというのが判例である(最判昭和47年1月25日民集9巻3号)。

台帳課税主義

地方税法は、固定資産税の課税は固定資産課税台帳の登録に従って行うこととしている。この台帳課税主義により、固定資産の課税を円滑かつ迅速に行うことができ、かつ納税者は自分の所有する固定資産の評価が他の納税者と比べて適正に行われているかを確認する機会を得ることができる。

課税物件

固定資産税の課税物件は土地、家屋、償却資産である(341条1項)。家屋については、一個の不動産として取引または利用の対象とされうる程度に建設が進んでいれば、固定資産税の対象とみなす、というのが判例である。償却資産については、法人税法または所得税法上その減価償却費が損金に算入されるもの(341条4項)と記載されていることから、事業用資産である場合に限り固定資産税の対象となると考えられる。また、同項の「取得価額が少額である資産その他・・・」の部分は、法人税法施行令133条の「少額の減価償却資産等」を指しており、20万円未満の償却資産で経費もしくは損金に算入されるか三年均等償却されるものは固定資産税の対象から除外されている。

課税除外

国および地方公共団体の所有する固定資産に対しては、固定資産税は課税されない(348条1項)。また、公益性の強い法人等についても固定資産税は課税されない(同2項各号)。実は皇室も課税除外となっている。また、宗教法人の境内も課税の対象から除外されている(同3号)。
ただし、これらの非課税規定に該当する固定資産を有料で借り受けて使用する場合は、その所有者に対して固定資産税を課すことができる(348条2項但書)。また、これらの非課税規定の適用は度々問題となっている(例えば住職が寺の管理のために住んでいる家や道具を保管しておくための倉庫等は非課税規定に該当するか)ので、個別に判例をあたるのが良いだろう。

課税標準

固定資産税の課税標準は賦課期日に課税台帳に登録された金額となる(349条)。これは適正な時価(341条5号)である。

適正な時価とは

適正な時価については多数の研究があるので、時間があるときに詳しく調べてみたい。通説・判例では独立した当事者間の自由な取引において成立する取引価格を指す。固定資産税は財産税であるが、「適正な時価」はその固定資産の収益力を反映すると考えられるから、ある意味収益税的な性格もあると考えられる。
平成6年度以降、土地の評価については基準年度(後述)の前年1月1日の地価公示価格ないし不動産鑑定士の鑑定評価額の7割を基準とするようになった。なお、この7割評価については閣議決定及び自治省(いまの総務省)による通達の改正によって行われたが、租税法律主義に反するものではないとした判例がある(大阪高判平成13年2月2日月報48巻8号1859頁)。これも時間があれば読んでみたい。
住宅用地については、(政策的な配慮からか)課税標準が大きく減額されており、 本来の3分の1となっている(349条の3の2第1項)。また、小規模な住宅用地(1住宅あたり200㎡以下の宅地)については本来の6分の1となっている(同2項)。

負担調整措置

固定資産税には、負担の急増を避けるため、税額が急増した場合には超過分を減額する負担調整措置が設けられている(附則18条および21条)。

時価の決定プロセス

土地と家屋については3年ごと(349条)、償却資産については毎年(409条3項)評価を行い価格を決定する。償却資産の評価を毎年行うのは、企業からの申告(383条)によって比較的容易に把握ができること、価値の減少が土地や家屋に比べて早いことなどが理由である。土地や家屋については、税負担の安定と行政事務の簡素化(土地や家屋の評価には時間と手間がかかる)のため、3年に1度評価をすることとなっている。

税率と税額

固定資産税の標準税率は1.4%であるが、各市町村は条例で税率を定めることができる(350条)。

都市計画税

市町村が都市計画区域内の土地および家屋に対して課税することができる目的税として、都市計画税がある(702条)。これは、市町村の都市計画達成によって当該土地および家屋が価格上昇や利便性向上等の利益を受けることに着目して課される税金である。